アパレル業界とウェブストア

先ほどお気に入りのお店が出来たと書いたが、残念なことにこれらのアパレル店はいまだウェブストアがない。Edificeは今年11月にウェブストアをオープンするとホームページ上に書かれていたものの、dan gentenに関しては、店長の名刺にすらURLの記載もない。KuipoでGoogleってくださいとのことで自分でURLを見つけた。


要するに日本におけるアパレル業界のウェブストアに対する認識は未だそんな程度なのである。所変わってIT先進国アメリカでは、Lands End、GAP、J Crew、LL Beanなどをはじめとうの昔からにネットストアが存在する。


経済地理的な視点から捉えると、アメリカはことファッションに対して日本人ほど敏感な感性をもっておらず(多くの人はと付け加えなければなるまい)、全米のショッピングモールのどこにいっても売っているブランドはどこも同じ(ただし、NYとLAは例外で個性的なショップが沢山ある)。まるで金太郎飴である。よってアメリカにアパレル業界はトレンドこそ作るものの、大量生産大量消費の経済原則なのである。また、買い物に行くのに車で数十分、ときには数時間ドライブしないとショッピングモールにたどり着けないほどの広大な土地をもって有しているため、当然買い物に行くこと自体が億劫になる。これらの要因からしてLands EndやLL Beanが早くからカタログショッピングを展開しており、IT革命とともに通信販売がウェブストアに移り行くのは歴史の必然である。


一方日本はどうかというと、ファッションに敏感な美的感性をもち(個人的には「間」を好む枯山水や盆栽などから日本人の美的感性は研ぎ澄まされたと仮説を立てているが)、1980年代後半から、アパレル業界は大量生産大量消費型から少量生産少量消費に移行し、渋谷、自由が丘等に路地裏のいけてる店が展開されている。また狭い国土に加え、世界最高水準の電車網を都市部に有し、学校帰り、会社帰り、はたまたお稽古帰り、こどもの送り迎えの間のついでにショッピングにいける便利さをがるのは見逃せまい。さらに購買という結果の物欲に加え、そもそもショッピング体験というプロセス自体が楽しんでしまうのが日本人的気質なのである。


それゆえウェブストアに対する批判がこれまでまかり通ってきてしまってきたのである。例えばそれは、光沢の具合や素材感がつかめないだとか、3次元の全体像が見えないと不安だとか、試着もしないでサイズが違ったらどうすんのだとか、そもそもショッピングにいけないこと自体がつまらないだとかである。


しかし、IT革命が進むにつれ、それらウェブストアが当初持っていた技術的、および業務プロセス的障壁はぼぼなくなりつつある。商品を画面上でぐるんと360度回転できたり、返品を総量も含め無料にしている。さらに決定的なのは、価格ドットコムなど価格比較サイトのヤフオク楽天モール等のライバルの新規参入により、ウェブ上に(最)安値ゲットできる世の中に突入した。つまり立場が逆転し消費者が情報優位をとってしまったのである。


そうなると店舗で見て触って試着して気にいったらウェブ上で最安値を買うという消費者行動が経済合理的となる。しかもわざわざ重い(またはかさばる)荷物を持ってショッピングしなくてもいいし、宅配してくれるのである。どうせウェブ上で安く買えるならわざわざ買い物にいかないくても。。そうですとうとうでてきたこのキーワード「わざわざ」。つまり同じものが手に入るのであれば、安さがショッピング体験を凌駕してしまったのである。経済の原則は、結局安いが勝ち。ウェブストアの便利さは一度体験してしまうと病み付きである。


日本のアパレル業界よ。もう既に波はそこまでやってきている。海の向こうのアメリカ大陸から。アパレル経営者はアメリカの優秀なウェブストアを研究し、いますぐにウェブストアの実行計画を立てねばならない。そして第二フェーズでCRMを導入し、優良なファン顧客を囲い込みなさい。最後に第三フェースで多言語化し、日本ファッション大好きな東南アジア、経済成長たくましい中国に輸出せよ。このホップ・ステップ・ジャンプ計画は日本経済の好況をドライブするであろう。また日本人としてそう願いたい。