Doing Business Internationally - the guide to cross-cultural success

Tom2003-09-20


■ 著者: Danielle Walker, Thomas Walker, and Joerg Schmitz
■ ハードカバー: 330 p
■ 出版社: McGraw-Hill ; ISBN: 0071378324 ; 2nd 版 (2002/08/23)
☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆ 〜 国際ビジネスをする方は必見!
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Doing Business Internationally: The...

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■ ボトムライン
国際ビジネスで勝ち組みになるには、カルチャーの違いを認識してそれを利用することだ。

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■ 日本語サマリー

【1. THE GLOBAL ENVIRONMENT】

  • グローバル企業は現在2つの問題に直面している。①グローバルに統合されると同時にローカルで責任を持つこと、②知識や経験を世界中に伝播できる組織を作っていくこと。
  • その課題の中で競争力を高めるため、次の3つの要因を分析。①グローバル化とアンチグローバル化、②テクノロジーの変化、③学習と成長。
  • 21世紀における組織形態の変遷、マルチナショナル(多国籍)企業→グローバル企業→トランスナショナル企業。グローバル企業とトランスナショナル企業の違いは、前者が権限を本社と海外支店とで分散しているのに対し、後者は、権限を国境に関係なくビジネスユニット単位に委ねている点である。

【2. CULTURE】

カルチャーの格言

  • カルチャーの境は国境ではない
  • カルチャーとは、アイデア、感情、および行動の共有パターンである
  • カルチャーは様様なレベルにおいて特有な方向付けをもたらす

【3. THE CULTURAL ORIENTATIONS MODEL】

10項目からなるカルチャー志向モデルを解説

  • 環境: コントロール/調和/制限
  • 時間: 複数焦点/単焦点、固定/流動、過去/現在/未来
  • 行動: である/する
  • コミュニケーション: ハイ/ローコンテキスト、直接/間接、表現的/、フォーマル/インフォーマル
  • 空間: プライベート/パブリック
  • 権限: 階層/平等
  • 個人主義: 個人主義/集団主義万人救済主義/個人救済主義
  • 競争: 競争的/協力的
  • 構造: 秩序/柔軟性
  • 思考: 演繹的/帰納的、一元的/体系的

【4. A SURVEY OF CULTURAL PATTERNS】

前節で解説したカルチャー志向モデルを、世界7地域 - ミドルイーストと北アフリカ、アジア、西ヨーロッパ、東ヨーロッパ、北アメリカ、ラテンアメリカ - に分類して調査した結果を公表。具体的な例を多数掲載しており、この本の一番の見所である。

【5. CULTURAL ORIENTATIONS IN COMMUNICATION】

  • コミュニケーションの送り手から受け手にそのまま伝わるものではなく、その間にカルチャーフレームに通され解釈される。
  • カルチャーフレームには、自民族主義、失敗のせいにする、ステレオタイプ、エチケットと行動、時間/場所、話題、立場と権限、スタイル、言語がある。

【6. CULTURAL COMPETENCE IN MARKETING AND SALES】

  • コカコーラが世界で売れているには各国ごとでマーケティング戦略を変えているからである。反対にウォルマートがドイツで失敗した経験をカルチャー精査の怠慢に原因がある。
  • セールスモデルを以下の3フェーズに分けて解説。
  • フェーズ1: グローバル・マーケティング環境 − 市場を理解し、機会を分析する
  • フェーズ2: グローバル・マーケティング戦略 − セグメンテーション、人口統計、プロダクトの特徴、価格戦略、販売チャネル、広告宣伝
  • フェーズ3: グローバル・インプリメンテーション − セールス管理と売り方

【7. TRANSLATING GLOBAL VISION INTO LOCAL ACTION: FOCUS ON MULTICULTURAL TEAMWORK AND COLLABORATION】

  • グローバルのビジョンをローカルの実行に移すための超越的なチーム育成のフェーズを以下の2階層に分けて解説。
  • 最小化 → 防御 → 受入 → 練習 → 超越
  • 選択 → 形成 → 激動 → 規律 → 成果発揮
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■ Tomの「本にもの申す」

勤めていた日系企業外資に買収された4年前は衝撃だった。上司が重郎からロジャーに代わり、2メートルはあるイギリスの大男がボスになったわけである。ロジャーは当然英語しか喋れない、ぼくらは片言の英語を使ってコミュニケーションをとろうとするが、双方にフラストレーションは溜まっていった。外人の上司になったのは、もちろんぼくらの部署だけではない。ありとあらゆるところでギャップがでてきたわけである。

なぜ、エキスパッツ(海外駐在員)は、どんなに忙しくても5時になると帰るのか。なぜ、1週間以上の長期休暇を年に何度も取るのか。なんで、ろくでもない意見でも、Excellentというのか。なぜ、たいして資料作れないくせにプレゼンはうまいのか。

この本には、ぼくのおもっていた「なぜ」を解き明かす事例がふんだんに掲載されている。一言でいってしまえば、カルチャーの違いだけど、そのカルチャーがどう行動に表れてくるのかを克明に描写している。外国人とひと括りにするのではなく、アジアと中東は違うし、またアジアの中でも日本と韓国で違いはある。

そうだ、「違い」はあるものなのだ。「違い」を分かった上で、その「違い」を受け入れる努力をしよう。きっと今までよりも異文化がわかりあえるはずだ。いまぼくはアメリカで仕事をしているのだけれど、アメリカ人が指示どおり仕事をしなくて困っていた時期がある。自分の(日本的な)やり方を押しつけたり、期待しても残念な結果に終わる。相手のやり方を理解して、適応してこそ結果はついてくる。

グローバルビジネスに携わるビジネスマンには、是非とも読んでもらいたい書である。できれば、外国の人と会う前に、この書を読んで、その特徴を掴んでおきたいものである。

なお、この書は、PMP(Project Management Professional)の推薦教材にもなっており、プロジェクト・マネージャーとしての行動規範を学ぶ上でも役立つ。