厚生年金保険料、70歳以上の徴収見送り(読売新聞)

●記事ヘッドライン
2004年の公的年金制度改革で与党内で論議されていた、賃金を得ている70歳以上の高齢者から厚生年金保険料(現在は年収の13・58%を労使折半)を徴収する案が見送られる見通しとなった。[記事全文]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040121-00000001-yom-pol

●Tomのもの申す
日本全体が年金制度に対して憂慮している。その結果として、金持ちから金を徴収することの難しさが露呈した。70歳以上で賃金収入のある人といえば、会社役員か自営業者であることが多い(もちろんそうでないケースもあるが)。いわゆる高齢富裕者層である。金持ちからたくさん徴収するのが税の近代論理(昔は逆だった)であるが、社会保険の論理となると同情論も簡単には働かない。決められた掛け金を払ったからこそ年金を受ける権利を得るわけであり、仕組みがうまくまわらないからその場しのぎで税金の論理を適用するのは理解が得られないのも当然である。ましてやそういった富裕者層は政治的権力と深い関わりを持つため、案が見送りになるのは政治の論理として成るべくして成ったといえよう。

一方、行動学の論理から高齢富裕者層が反対する理由を探ってみよう。人間は心をもつ動物なので、共感できないものには拒否する性質を持つ。つまり、志に共感できないからで反対するのである。ぼくは単なる金の問題ではないと思う。高齢富裕者から徴収したところで、年金制度の抜本的改革にならないから、現状維持を望むのだと思う。年金制度が危ぶまれてからもう10年近く経つが、小手先の保険料変更のみで抜本的な改革には至っていない。次世代の働き口である子どもたちの出生率もあがっていない。政府はこの失われた10年の出口を見つける気は果たしてあるのか。

老後の不安は、日本の将来に対する不安である。日本が元気を取り戻すためには決して避けて通れない茨の道である。成せば成る、成さねば成らぬ何事も、成らぬは人の成さぬ成りけり(上杉鷹山) 。