サービス残業が72億円 02年度下期厚労省まとめ

ボトムライン
サービス残業症候群に対しての人事の処方箋は、ずばり「本質的な成果主義を再構築する」ことだ。(詳細は、以下の「人事の処方箋」にて)


●ニュースヘッドライン
厚生労働省は28日、使用者が残業代を支払わなかった「サービス残業」で、2002年10月から今年3月までの間、労働基準監督署の是正指導を受けて支払った企業が計403社あり、その対象は約6万4000人の総額約72億3900万円に上ったと発表した。[共同通信 2004年11月28日 記事全文]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031128-00000211-kyodo-soci


●Tomのニュースにもの申す
労基署の残業是正の動きが活発だ。不景気になってこぞって人員削減をした結果、業務のしわ寄せが在職者にやってきた構図だ。背景としては、①ものを云う社員の増加による労基署へのたれこみ数の増加と、②残業是正をすることで雇用改善につながるという厚生労働省の淡い期待がある。

つまり、会社は今、労働者から訴えられ、お役所から目をつけられる板挟みの状態にあるのだ。

世界に比して総労働時間が長いと云われて続けてきた日本であるが、ILOの統計的には、世界で6位に留まっている(2000年統計)。
http://www.ilo.org/public/english/employment/strat/kilm/kilm06.htm

1位 韓国   2,474時間
2位 チェコ  2,092時間
3位 アメリカ 1,979時間
、、、
6位 日本   1,842時間

しかし、統計の中身をみてみると、少なくとも日本に関しては事実を反映しているとは云いがたいのだ。年間ではイメージがつきづらいので、一日当たりの労働時間に換算してみると、たった8.3時間となる。これは、労働省の毎月勤労統計からとった数字だからである。毎月勤労統計は、人事部が作成してお役所に提出する。当然労働者が申請して上司が承認した労働時間しか報告されていない。
http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/youran/data14r/D-01.xls

ではサービス残業の実態はどのようにして把握できるのか。総務庁統計局の労働力調査厚生労働省の毎月勤労統計の差異をみるのである。縄張りの異なるお役所の統計が差異をさらけだすとはなんとも皮肉なものだ。労働力調査の対象は、全国の全世帯から無作為に選定した約4万世帯であり、労働時間の実態を労働者に直接聞いているためより実態に近いといえよう。

参考までに2003年(平成14年)の実際の数値で比較してみると、以下のようになる。
毎月勤労統計 35.3時間/週(7.81時間/日)
http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/youran/data14r/D-01.xls
労働力調査  41.9時間/週(9.27時間/日)
http://www.stat.go.jp/data/roudou/2002n/ft/zuhyou/201420.xls

週にして6.6時間、一日にして約1.5時間の差である。この差がサービス残業の実態を表している。


●人事の処方箋
会社は、サービス残業を見てみぬふりをするのは危険である。危険であるばかりか、社員のモラルや生産性の低下に繋がる経営的な問題と認識して抜本的な対処に取り組むべきである。

サービス残業症候群に対しての人事の処方箋は、ずばり「本質的な成果主義を再構築する」ことだ。具体的には以下の処方があげられる。

成果主義人事制度の導入(成果志向への頭の切り替え)
◎適合職種に対して裁量労働制の導入(職務範囲の明確化と達成するための知恵の創造)
◎時間管理の徹底(始業/就業、納期、時間効率)
◎成果を測る評価制度の再構築(成果に対する労使間での合意)
○多用な雇用形態(パート、派遣、期間契約社員ワークシェアリング)の受け入れ(柔軟な人件費管理)
○ノンコア業務のアウトソース(変動費として管理)
○二重就業の許可(本業以外からの学習)
○学習補助金の仕組み導入(仕事時間以外での学業からの学習)

これらのうち一部を取り入れるだけでは不十分。◎の4つはセットでいれることが特に重要である。限られた時間で成果を出すのが真の成果主義の理念だ。日本人にはゆとりが足りない。人生仕事だけじゃない。ゆとりがよりよい仕事を生み、よりよい家庭を築くということをもっと世界に学ぶべきである。