週3日勤務も出現 日本IBM新制度の「革命」

●短時間勤務への人事の処方箋
サラリーマンが時短を選択するためには、まず女性が働きやすい環境を整えよう。


●ニュースヘッドライン
正社員の週3日勤務もOK! しかも、理由は「特に問わない」――。
大手コンピューターメーカーの日本IBMが、あっと言わせるような
短時間勤務制度を今月から導入した。(YomiuriWeekly2004年1月25日号より)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/yw/yw04012501.htm


●制度概要
以下の4つのパターンから社員が選択する。

(1)3日勤務(フルタイムに比して労働時間60%、給与50%)

(2)4日勤務(フルタイムに比して労働時間80%、給与70%)

(3)5日勤務で労働時間はフルタイム社員の6割(フルタイムに比して労働時間60%、給与50%)

(4)同8割(フルタイムに比して労働時間80%、給与70%)

ポイントは、理由は問わないが常識的な範囲での利用となる点だ。


●Tomのニュースにもの申す
日本にとっては確かに革命かもしれない。しかしながら時短は世界のスタンダードであり、ようやく日本もライフ・ワーク・バランスを意識し始めてきた表れといえよう。在宅勤務や育児休業を積極的に取り入れる日本IBMは着々と世界のスタンダードに近づく制度を取り入れている。

これについて特集記事の中に、上智大の教授の懐疑的なコメントが寄せられている。

「高度に電算化し、サービス業化した会社や賃金の高い企業でなければ採用できない制度で、日本IBMだからできたことです。従来型の製造業では難しいし、中小企業の社員が短時間勤務で給料が半減しては暮らしていけません」

ぼくはこの教授の「ほかの会社じゃあ無理だ」という断定的なコメントに大反対の立場である。

なぜなら、このコメントは現在の日本の盲点に目をつぶったまま述べられているからである。では、日本の盲点とは何か。女性が働きやすい環境が整っていないという事実である。出産、育児、あるいは介護、そしてその後の社会復帰をサポートする仕組みが不十分だといわざるを得ない。

サラリーマンが時短を選択するためには、女性が働きやすい環境が整っていることが条件となる。つまり、フルタイムのご主人の収入を、短時間勤務のご主人と奥様の収入で補うと考えて欲しい。いわゆるオランダ方ワークシェアリングの考えだ。そうすれば、中小企業の社員の時短は無理だという話にはならない。

だから、無理と否定形から入るのではなく、どうしたらそれができるのかという本質的な問題を議論することが、前進に繋がるということを云いたい。

そしてもう一つ、制度を導入した日本IBMに対して敢えてものを云いたい。「理由は問わない」というのを売りにしている割には、「常識的な範囲」に留めるというのではせっかくのインパクトがコンパクトになる。特集の記者曰く、「思い切りギャンブルを堪能する」「趣味のヨットに生きる」「何もせず、ぼーっとしていたい」などでは、はねられてしまうという。

それでもいいではないか。というのがぼくの立場である。ワーク・ライフ・バランスとはまさにそういうことをいうのではないか。生活できる程度に稼ぎ、そして趣味に生きる、大いに結構ではないか。

日本人は趣味というとお遊びに捉えるが、ここアメリカでは趣味の幅が実に広く、しかも極めている人を多くみる。DIYで風呂を改装する。家庭菜園でぶどうを育てワインを造る。ミュージカルのバックダンサーとして公演に出る。などなど。そんな楽しそうなことなら趣味に生きたくもなるではないか。彼らが定時に帰るのは当たり前である。家に帰って少しでも早く趣味をやりたいし、週末がなんといっても待ち遠しいわけである。

趣味に時間を割かない日本人は、定年になってふと困ることに気がつく。これまで会社にすべての時間を捧げていた人が、急に趣味をやるといっても無理なのである。趣味のやり方を知らないし、どれから手をつけていいかも分からない。長年連れ添ってきた奥さんとも過ごす時間が長くなるとうざったくなる(なられることの方が多いかも)。

だから、若いうちから趣味の時間を作り、長い時間をかけて継続し極めていって欲しい。ワーク・ライフ・バランスは経済大国日本のこれからの課題である。

Happy Friday!