Just for Fun!(邦訳タイトル:それがぼくには楽しかったから)

Tom2004-02-06



■ 著者: リーナス・トーバルス

■ 出版社: 集英社 ; ISBN: 0066620732 ;

☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆(急成長フィンランドの成功の背景をご覧あれ) 

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Just for Fun: The Story of an Accidental...

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■Tomの本にもの申す

リーナス・トーバルス、リナクスの生みの親といえばあー彼かとわかるだろう。

リーナスは、「人生の意味」ということに尋常なる興味を抱いている。彼の解はこうだ。

一、SURVIVAL(生存)
二、SOCIAL(社会)
三、ENTERTAINMENT(娯楽)

究極の人生の意味とは、リーナスにいわれれば娯楽だと。道楽でリナクスを開発し、ウィンドウズに匹敵する勢力をつくりあげた彼の言葉だけに説得力がある。

ぼくは、ひょんなことからフィンランドに興味を持ち始めた。日本人には馴染みの薄い国で、サンタクロースとサウナと白夜、オーロラくらいの代表的なものしか知らないかたが殆どだとおもうが、実は米国を抜いて経済成長力ナンバーワンに輝いた大きな小国なのである。調べれば調べるほどフィンランドは魅力的で、その国をもっと知ってみたいとおもって、リーナスの自伝に辿り着いたわけだ。

近年こぞって政府系のOSに指定されるLINUX。その一番の特徴はオープンソースといって、世界中の技術者たちが無償で知恵をだしあってインターネット上でプログラム(ソースコード)を公開して急速に開発をすすめてきた点だ。ウィンドウズの商業主義にまっこうから対抗し、ウィンドウズに匹敵する、いや勝るとも劣らないOSをつくりあげた。その指揮者リーナスはフィンランドの出身で、ヘルシンキ大学在学中にこの一大プロジェクトを起こした。

なぜリーナスがソースコードを公開したのか。リーナスはよりよりものを作るために、多くの人の知恵を借り、理念に共感して自主的に参加してもらうことこそが必要だと考えた。独創的なアイデアを秘密裏に開発して、特許で固めることだけではない世界を作り上げたのだ。

では更に掘り込んで、なぜリーナスがそれを必要だと考えたのか。単純にいって、それをやることが彼には「楽しかったから」である。楽しいからやる、ごくごく単純なことを実践してしまったのがリーナスの凄い人たる所以である。

この本を読んで、ぼくももっともっと仕事を楽しんでやりたいと益々思いを固めた。いまアメリカで仕事をやっているが、日本でやってるよりはっきりいって楽しい。メリハリがはっきりしており、仕事は仕事、プライベートはプライベートで区別されてみなそれぞれに一生懸命だ。決して仕事だけではない。また仕事でも各人がエンターテイメント性をもっており、成熟した豊かな社会であるということを如実に感じるのである。フィンランドからアメリカのシリコンバレーに移住してきたリーナスもアメリカのエンターテイメント性を感じていることが、著書にもたびたび登場する。さらにシリコンバレーに住むぼくにとっては、お馴染みの場所や店、例えば、IKEA、冨貴寿司、エルカミーノリアル、サンタクララゴルフクラブ、ハーフムーンベイなどが登場するため時おり自分が本の中に登場しているような錯覚に陥った。

本書を読んで、フィンランドに対する更なる興味が涌いてきた。この井戸、もっと奥まで掘ってみたい。そういう気がする。