世界の中心で、愛を叫ぶ

Tom2004-06-28


● 著者: 片山恭一

● 出版社: 小学館 ; ISBN: 4093860726 ; (2001/03)

● おすすめ度 ☆☆☆☆★(最愛の人を亡くす疑似体験に) 

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世界の中心で、愛をさけぶ



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ボトムライン

愛する人のために人はなにをしてあげることができるのだろうか。


●Tomの本にもの申す

主人公朔太郎(以下朔ちゃん)の気持ちが30%くらい理解できる。実はぼくも、、、白血病で友人(Dちゃん)を亡くしたことがある。高校の同級生で、3年の闘病のうち息をひきとった。

サッカーでできた痣がいつまでも消えずにDちゃんはずっとおかしいんだよなーっていってた。病院にいってもたらい回しにされ、病名がわかったときには入院していた。「血液の病気」という風にぼくら友人は聞かされていた。病院で退屈する友人を少しでも励まそうと高校生らしくエロ本をもっていったりするわけだが、「血液の病気なんだからそんなところにまわしている血はねーんだよ」って笑いながら怒られたこともあった。

「推薦で大学いきてーな」これがDちゃんの口癖だった。でも推薦でいくには学校の試験を受けねばならず、Dちゃんは入院のため受けることができなかった。「まあゆっくりやるさ」お揃いで作ったサッカーの短パンを穿いたDちゃんはいった。

やがて友人の多くは大学へ進み、一部は浪人生となった。大学生になってからもたまに友人らと病院にお見舞いに行ったが、生活の楽しさと裏腹に病院への見舞いの回数は減っていった。

暫くお見舞いにもいってないなと思っていた矢先に、Dちゃんがなくなった知らせを受けた。回復して家になんどか帰ってたと効いていただけにDちゃんの死の知らせはショックだった。しかし、それ以上にショックだったことは、Dちゃんが白血病だと知ったのがそのときだったからだ。

お父上が弔辞で「なにも楽しいことを経験せずにいってしまった」とおっしゃられたのが印象的だった。ぼくらと楽しいこといっぱいやったじゃんかって突っ込みをいれるような雰囲気では到底なく、親としてはそのように思われるのも甚く当然である。


前フリがとてもながかったけど(やっとここから書籍評論に入ります)、この本を読んで大事な人を亡くす感情を思い出した。ぼくの場合は、恋人ではないし、関係がまったく違うわけだけど、つかみようのない感情があったことをいまでもときどき思い出す。きっとおじいちゃんの心境に近いのだろうが、友人と墓に一緒に入りたいとは思わない。

死ってなんなんだろうって、愛ってなんなんだろうって哲学について考えさせられる作品だ。愛する人のためになにができるか、初心忘れるべからずだね。初心どころがもっと膨らませてかないとね。自分の態度に反省。

なおこの作品を読みながら、平井堅の「瞳を閉じて」のCDをかけることをお薦めする。いまでもあのフレーズが頭の中でぐるぐる駆け巡る。

ちなみに。「世界の中心」とは、「エアーズロック」があることで有名な、オーストラリアのウルルの地のこと。


●心に響いた言葉

「人生には実現することとしないことがある。実現したことを、人はすぐに忘れてしまう。ところが実現しなかったことを、わしらはいつまでも大切に胸の中で育んでいく。夢とか憧れとか言われているものは、みんなそうしたものだ。人生の美しさというものは、実現しなかったことにたいする思いによって、担われているじゃないだろうか。実現しなかったことは、ただ虚しく実現しなかったわけではない。美しさとして、本当はすでに実現しているんだよ。」おじいちゃんより