米マイクロソフトCEO、後任候補常に1000人

●ニュースヘッドライン

来日中の米マイクロソフトスティーブ・バルマー最高経営責任者(CEO)は29日、都内で経済同友会の会員向けに講演し、「常に1000人の次期CEO候補をリストしてある」と明かした。数人に絞っていないのは、情報技術(IT)を駆使すると世界中から優秀な人材のデータが集まるからだ。(Nikkei Net 2004/06/30より)http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20040629AT1D2909329062004.html


●人事の処方箋

備えあれば憂いなし


●Tomのもの申す

後継者候補の選抜および育成のことを、人事用語で「サクセッションプランニング」という。主な目的は、二つあり、A.企業の永続的成長のための人材戦略と、B.非常時のリスクマネージメントがある。例えば、本来CEOが任期満了で退任になった際には、A候補の財務担当VPのX氏をCEOに就任させるべくトレーニングプログラムを実施しているが、任期満了まであと一年半あるとする。万が一CEOが他企業にヘッドハントされたり、体調を崩されたりした場合には、B候補のマーケティングVPを即戦力としてCEOにつけるといった具合である。

このサクセッションプランニングは一般的にCEOのみならず、部門のヘッドや場合によっては部長クラスまで計画されることがある。計画そのものを立てることは企業の健全な成長やリスク回避のため望ましいことだが、現実の世界はポジション争奪戦国時代であり、プランは立てても実行しがたく、外から人材を登用することも珍しくない。特にCEOクラスともなると外部からのヘッドハントが一般的だ。

今回のマイクロソフトの公表の目的は一体なんだろうか。予測するに、うちは幹部候補が1000人もいる体制だから今後数十年単位で安泰だとでもいいたいのだろう。加えていうなら、うちは外部のCEOとしてヘッドハントされる人材は多数いるものの、うちのCEOは内部出身で事足りると。裏を返せば多数リストアップしておかないとみんなヘッドハントされてマイクロソフトのCEO候補がいなくなってしまうと解せなくもない。。そうだとしたらなんと皮肉なことか。

サクセッションプランニングは時にモチベーションアップの材料に使われるが、プラン外の人のモチベーションを同時に下げることは否定できない。弱肉強食の社会で、足の引っ張り合いにならない人事制度およびカルチャー作りが必要不可欠だ。