竜馬がゆく

Tom2004-06-30


● 著者: 司馬遼太郎

● 出版社: 小学館 ; ISBN: 4093860726 ; (2001/03)

● おすすめ度 ☆☆☆☆☆(事を成したい方はまず歴史に学べ) 

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ボトムライン

幕末の乱世に生きたたった一人の「日本人」坂本竜馬の人生はでっかいぞ。


●Tomの本にもの申す

この世紀の傑作に対していまさら申し立てることはなにもない。

以下心に響いた言葉が多数あり、抜粋して紹介するが、この本を読んで自分はかくありたいと思ったことを敢えて恐れずに申すと、「自分は地球人でありたい。そしていつか必ず事を成す」


●心に響いた言葉

要するに、史上名を残した志士というのは、足で取材し、足で伝播した旅行かばかりということになる。(2巻 萩へ P347)

「おらァ、ニッポンという国をつくるつもりでいる。頼朝や秀吉や家康が、天下の英雄豪傑を屈服させて国に似たものを作った。が、国に似たものであって、国ではない。源家、豊臣家、徳川家をつくっただけじゃ。ニッポンはいまだかつて、国がなかった。」(3巻 嵐の前 P283)

「人生は一場の芝居だというが、(中略)、芝居とちがう点が、大きくある。芝居のばあいは、舞台は他人が作ってくれる。なまの人生は、自分で、自分のがらに適う舞台をこつこつ作って、その上で芝居をするのだ。他人が舞台を作ってくれやせぬ。」(3巻 海へ P287)

人間には本来、上下はない。浮世の位階というのは泰平の世の飾り物である。天下が乱れてくれば、ぺこぺこ剥げるものだ。事をなさんとすれば、知と勇と仁を蓄えねばならぬ (3巻 京の春 P337)

「世に生を得るは事を成すにあり」「人の跡(業績)を慕ったり人の真似をしたりするな。釈迦も孔子も、シナ歴朝の創業の帝王も、みな先例のない独創の道をあるいた」(3巻 京の春 P409)

切腹について)筆者は、日本人の死を軽んずる伝統があったというのではなく、人間の最も克服困難とされる死への恐怖を、それをおさえつけて自在にすることによって精神の緊張と美と真の自由を生みだそうとしたのだと思う。(4巻 惨風 P266)

西郷は「敬天愛人」という言葉をこのんだが、これほど私心のない男はいなかった。若いころから私心をのぞいて大事をなす、ということを自分の理想像とし、必死に自己を教育し、ついに中年に至って、ほとんどそれにちかい人間ができた。」(5巻 変転 P265)

勝海舟曰く)「坂本竜馬とは、西郷をぬけめなくしたような男だ」(同上)

(日本西教史より)「日本人の得意とするところは武術で、男子十二歳ではじめて刀剣を帯び、以来夜間のほか腰間を脱せず。武器は剣、短剣、小銃、弓矢である。剣は精錬をきわめ、その鋭利なことはヨーロッパの剣を真二つにしても刀に傷ものこさない。気質として、名誉を重んじ、他に賤められることをもっともきらう。日本人の多くは荘荘不羈で戦闘に堪えうる。その容貌はオリーブ色だが、シナ人は日本人を白人といっている。精神活発で、敏捷であり、勤勉ですべての苦難に堪える美質がある」(6巻 薩摩行 P49)

薩長連合が公論だということに対して筆者は)しかししょせんは机上の論で、たとえば1965年の現在、カトリックと新教諸派が合併すればキリスト教の大勢力ができる、とか、米国とソヴィエト連邦とが握手をすれば世界平和はきょうにでも成る、という議論にやや似ている。(6巻 秘密同盟 P246)

「縁結びの物見遊山だぜ」(6巻 霧島山 P316)

「第一策。天下の政権を朝廷に奉還せしめ、政令よろしく朝廷より出づべき事」
「第二策。上下議政局を設け、議員を置きて、万機を参賛せしめ、万機よろしく公議に決すべき事」
「第三策。有材の公卿・諸侯、および天下の人材を顧問に備へ、官爵を賜ひ、よろしく従来有名無実の官を除くべき事」
「第四策。外国の交際、広く公議を採り、新たに至当の規約を立つべき事」
「第五策。古来の律令を折衷し、新たに無窮の大典を選定すべき事」
「第六策。海軍よろしく拡張すべき事」
「第七策。御親兵を置き、帝都を守衛せしむべき事」
「第八策。金銀物貨、よろしく外国と平均の法を設くべき事」
(7巻 船中八策 P411)

「しかない、というものは世にない。人よりも一尺高くから物事をみれば、道はつねに幾通りもある」(8巻 夕月夜 P26)

「どうしても幕府が呑まぬなら、すこし服みやすくすればよい。例えば幕府は将軍の称号をうしなうことにこだわるだろう。そのときは称号ぐらい残してもかまわない」(8巻 早雲雀 P299)

大政奉還をなしたことを知ったときに竜馬が吐いた言葉)大樹公(将軍)、今日の心中さこそと察し奉る。よくも断じ給へるものかな、よくも断じ給へるものかな。予、誓ってこの公のために一命を捨てん。(8巻 早雲雀 P322)

「仕事というものは、全部やってはいけない。八分まででいい。八分までが困難の道である。あとの二分はだれでも出来る。その二分は人にやらせて完成の功を譲ってしまう。それでなければ
大事業というものはできない」(8巻 近江路 P331)

(新政権の人事に竜馬の名がないことを知り陸奥宗光がその真意を尋ねたところ)「世界の海援隊でもやりましょうかな」(8巻 近江路 P342)