成果主義は問題か?

●経営側の9割「問題あり」 成果主義に悩む労務担当者

 「成果と評価の判定が難しい」「本当に個人の成果を引き出しているか疑問」。民間調査機関の労務行政研究所(猪股靖理事長)が成果主義人事・賃金制度について、大手企業の労使にアンケートした結果、経営側の88%、労働側の94%が「問題がある」と回答したことが20日、分かった。(共同通信 3月20日


●Tomのもの申す

ことさら昨今成果主義に対する風当たりは強い。まるで成果主義=威敵=悪のようにマスコミに取り上げられ、まわりはそれに同調している。今回の記事もそれを煽るような言い方だ。

そもそも質問の聞き方が偏っている。複数回答可の中の一選択肢として成果主義があり、その結果、94%の労務担当役員が問題ありといっている。ただそれだけのことである。問題があることが悪いことかというと必ずしもそうとはいえない。問題があるということから類推されることは、それだけ多くの人の関心を寄せていることであり、それが重要なことと認識されているということくらいである。

そもそも企業の戦略は、その置かれた外部環境および内部環境によって刻々と変化するもので、CEOは船の舵を取り、COOはクルーを仕切るものだ。マーケットという荒波の中で航海していくことは簡単なことではない。成功すれば宝の山を発見するが、失敗すれば船は沈没する。

問題を発見し、それを修正していくのが経営の一つの役割であり、いれればそれで終わりなんてものは仕事の世界では多くは存在しない。アプリケーションですらインストール後にバージョンアップが必要だ。

企業はこぞって運用面で見直しにはいっているという。誠にいい傾向である。ハーズバーグの理論に照らすと、成果主義は動機付け要因でもあるし衛生要因でもある。つまり、目標設定およびレビューそのものは動機付け要因(満足要因=満たされていると幸せと感じる)であるが、処遇に反映される段階には衛生要因(不満足要因=満たされていても幸せと感じないが、満たされたいないと不満に感じる)となる。

日本が成果主義を取り入れた背景に、年功序列型賃金を維持していくことが困難という点があることは否めない事実である。それが故、処遇への反映を急ぎ足で進めてしまった感があるのではないか。成果主義を動機付けツールとして真剣に見直すことは誠に理にかなっている。批判するのは簡単だが、どう運用したらうまくいくのか、それを考えるのは労務担当者だけではなく、その組織にいる全員であるべきである。